今年も、「自己ベスト超え」海上養殖サーモンを届け続ける。青森サーモン®養殖ダイアリー ②出荷
オカムラ食品工業が手掛ける養殖・調達・加工・販売の4つの垂直統合事業のうち、サーモン養殖事業にスポットをあてて、四季折々のイベントを追いかける「青森サーモン® 養殖ダイアリー」。
前回お伝えした、青森県今別町で水揚げされた青森サーモン®。今回は、青森市内の加工工場での加工・梱包・出荷までの工程をご紹介します。
ここでも、これまで日本にはなかった規模のサーモンを出荷するための、新たな挑戦と創意工夫にあふれていました。
※前回の記事、海上養殖場からの水揚げについてはこちらからどうぞ
サーモンが工場にやってくる
港で水揚げ・血抜き処理を行ったサーモンがトラックで運ばれ、次に向かうのが青森市内の加工工場です。
海面養殖場のある青森県今別町からなら2時間弱、深浦町からなら2時間強で到着します。朝1便が工場に到着するのは6時台。
ということはもちろん、工場のスタッフは6時より前から出勤して、トラックを待ち構えています。この時期の工場は活気に満ちています。
特注の青い保冷コンテナ1個あたり150尾前後のサーモンと氷・海水を一緒に入れて、マイナス2℃近くまで冷やし込まれた状態のまま、港からトラックで運び込まれます。
移動中に、品質を保つために定めた温度を上回らないように、季節やサーモンのサイズに合わせて、コンテナに入れる尾数を日々増減しています。それでも移動中の2時間ほどで、温度は1℃ほど上がるそうです。
サーモンの品質を落とさないためにも、水揚げから工場に運び込む間にも「コールドチェーン」を構築しておくことがとても大事なんです。
サーモン加工工場に潜入
サーモンは冷やし込まれたまま工場内の加工ラインに運びこまれます。ちなみに、ラインまで搬入するのもフォークリフト、コンテナの中身を出し、氷水とサーモンを分けてサーモンだけラインに流す、写真の作業もすべて機械(コンテナリフト)が行います。
コンテナの中身は、氷水も含めて重さ1トン弱。重いものを運ぶ人力作業はここにはありません。
これは海外製のサーモン用コンベアー。サーモン養殖の先進国、北欧での加工作業で培われた機械を日本に導入しています。
わたしたちは、これまで国内に存在しなかった規模のサーモン養殖・加工を行っているため、適した機械が必ずしも日本国内にあるとは限りません。養殖場でも工場でも、海外製の機械を数多く輸入しているのが特徴です。
コンベアーを導入したときに来てくれたインストラクターの説明も、取扱説明書も全て英語です。ヨーロッパの機械ですから、故障してもすぐに修理には来てくれません。
必要に応じて、ヨーロッパのメーカーとオンラインミーティングでつないで状況を確認します。
そのため、食品工場内の業務を取り仕切る製造部のメンバーは、自分たちで説明書を読み、オンラインミーティングで英語でコミュニケーションを取ります。
例えばチェーンが外れた、などの自身でできる範囲の修理なら自分たちでメンテナンスをしながら、機械を使いこなしています。
「なんとかなるもんです」と笑いながら話してくれた工場長、木村さんの言葉の裏には、これまで相当なトラブルも乗り越えてきたであろう経験と自信のようなものを感じます。
生サーモンの出荷まで
さて、先ほどのコンベアーに頭を下にしてサーモンを固定し、お腹を開き、頭と身だけの状態、つまり三枚おろしにする直前(「セミドレス」と呼ばれる状態)まで加工します。
当社の工場で加工するのはほとんどがここまで。
セミドレスと言われる状態で箱詰めされて、市場やスーパーマーケット・飲食店などに出荷されます。
これは「グレーダー」という機械。ベルトコンベアーで運ばれたサーモンが重量センサーの上を通ると、重さによって、ずらっと並んだステンレスの箱に仕分けられます。
果物の選果場のニュース映像なんかでよく見るあれです。
これも海外製です。箱詰めする尾数が貯まると、それぞれのキロ数表示の右側にある青いランプが光ります。いままさに光ってますね。
ランプが光ったらボタンを押して、箱の下に準備した発泡スチロールにサーモンを流し込み、同じ方向に頭が向くようにサーモンたちを整えます。
スタッフになぜ同じ方向にサーモンを整えるのか聞いたら、「中で身が潰れないようにするのだけど、納品先でお客様が箱を開けたときに雑然と入っているよりはいいでしょ」。
ここにも気遣いがこもっていますね。
整え終わったら、その先のコンベアーに流します。ここでも、人力で重い箱を持ち上げる作業はありません。
出荷先の荷札を張り、ここでもしっかり氷を詰めてコールドチェーンをキープ。
早ければ水揚げから6時間も経たないうちに、生サーモンは工場から出荷されます。
冷凍サーモンに加工するよ
さて、年間を通じて出荷するためには冷凍保存する分も必要です。そのため、養殖場からは日々の生サーモンの出荷量よりも多く水揚げを行い、工場に運びます。
生サーモンの出荷分の梱包準備が終わったら、次は冷凍サーモンの加工です。
冷凍の勘どころは、「急速かつ低温」で冷却すること。
凍結したときに細胞を壊さないように、「細胞自体が、凍結されたことを理解できない」(少年ヒーロー漫画の技解説で出てきそうなワード)スピードで凍らせると、解凍した時に水分が出にくくなるんです。
高品質な冷凍には、冷やす温度も大事ですが、冷風が大事。同じ気温の冬でも、風の強い日は一層寒いですよね。早く熱が奪われるという点では、原理は同じです。
常に冷風に接すると、凍結までの時間は短くできます。そのため、重ならないようにトレーに並べたサーモンを数段並べたカートに入れ、冷気の通り道を作ります。
この作業は、室温5℃以下の保冷庫で行います。ここでもコールドチェーンが大事です。保冷庫のスタッフは(白衣で見えませんが)他のスタッフよりやや厚着。
「常にサーモンを乗せたり運んだり、動いているので思ったより寒くない」のだそう。や、寒いですよここ・・・
その後、冷凍庫にカートごと入れて3時間。先ほどの写真のようにカッチカチに凍ります。搬入搬出スタッフは、さすがに青いコートを着て厚着です。
凍結したサーモンを箱詰め
冷凍したサーモンはその後、はかりで計って、段ボールに一定の重量分を箱詰めする工程へ向かいます。
これがそのはかりです。見慣れない形ですよね。
これ、14個あるそれぞれの受け皿にランダムにサーモンを乗せると、自動計算であらかじめ設定した重量にぴったりになるための受け皿だけが斜めに傾いて、サーモンが箱詰めラインに流れていきます。
計測履歴はデータ転送・保存されます。サーモンのサイズに合わせて、この受け皿、ここでも特注です。
写真では、手前から2番目・5番目の受け皿が選ばれ傾いて、冷凍サーモンが箱詰めラインへ落ちていくところ。一番手前のトレーは選ばれなかったので傾いていませんね。
もしもこの作業を人力で行うと、規定の重量に近づいてきたときに、最後の1匹を入れたときにちょうどいい重量になるようにサーモンAがいいか、サーモンBがいいか・・・と選ぶ作業が延々と続きます。
この機械導入のおかげで正確に・スピーディーに箱詰め作業が進むようになった、と木村工場長は喜びます。
効率的に・衛生的に・正確に加工・出荷できるように、木村さん達スタッフはサーモン出荷が終わる7月以降に、いそがしい合間をぬって展示会や機械メーカーさんを訪問し、ときにはサーモン用の特注機械を作ってもらうよう相談しているそうです。
箱詰め前の最後の作業は「グレーズ」です。凍ったサーモンを水に数秒つけて、サーモンの表面に氷の膜を作ります。
家庭でも、冷凍庫に長く入れておいた食材が乾燥して(フリーズドライっぽくなる)しまうこと、ありますよね。
冷凍保存しているうちに品質が落ちないよう、水でコーティングするのが大事なんだそうです。
あ、重量を計ってからグレーズしているので、水増ししてませんからね。
黄色いかごにサーモンを入れたまま、ざぶっと水につけて、
取り出したところ。霜が表面を覆っていた先程のサーモンに比べて、氷の膜できらきらしています。
箱詰めが終わると、冷凍庫に入れられ出荷の時を待つばかり。
生サーモン水揚げ時期でも、到着まで日数のかかる海外への輸出分は冷凍サーモンを出荷します。
出荷までの流れ、こんな感じです。
量・質ともに「自己ベスト」を超えるために
様々な創意工夫がそこかしこにあるサーモン加工工場の内部をしっかりめにご覧いただきました。最後に、取材した「中の人」の感想を書いてみようと思います。
明治時代初期、日本に機関車や動力船などを作る技術と産業がなかった頃は、鉄道を敷設したり軍艦をつくるためには、完成品を海外から輸入した時期がありました。
その後は、日本人の得意とする「輸入した技術や文化をカスタマイズ」して、この国の気候条件や文化に合わせてあらゆる機械の国産化を推進・実行して今に至ります。
そんな「殖産興業」時代の規模感と比べるには大変おこがましいのですが、わたしたちはこれまでこの国になかった「大規模海上サーモン養殖と工場加工」という、あらたな事業を推進しています。
養殖事業・国内加工事業スタッフは、明治初期の日本人と同じように新たな機械や技術を外国語のまま学び、津軽海峡・青森の気候風土や日本の法令に合わせて使い方をカスタマイズし、日によっては1日あたり1万尾以上のサーモン出荷実現のための改善を続けています。
まだまだ養殖・出荷量は増やしていきたいと考えている以上、量だけでなく質も常に「自己ベスト」超えを求められます。携わるスタッフは、特注と海外製の設備と格闘しながら、いまも来年以降に向けた「日本ではじめて」に挑戦中です。
聞けば、たちどころに教えてくれる人も周りにはいません。私達の会社では、偉いひとがすべてを知っているのではありません。挑戦と経験をチームの力に変えるメンバーひとりひとり日々の取り組みが、新たな事業を一歩ずつ、前に進めています。
2023年のサーモン水揚げ量は1,606トン。今シーズンはこれを上回る数量・品質で「自己ベスト」更新を推し進めています!
というわけで恒例の採用のお知らせです。
わたしたちは、自己ベスト更新の一端を担う人材を募集しています!応募をお待ちしてますー。