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ストレスなく運べ! 青森サーモン®養殖ダイアリー ④幼魚引っ越し・受け入れ

オカムラ食品工業が手掛ける養殖・調達・加工・販売の4つの垂直統合事業のうち、サーモン養殖事業にスポットをあてて、四季折々のイベントを追いかける「青森サーモン® 養殖ダイアリー」。

第4回は、これまでお伝えしてきた成魚の話から時間をさかのぼり、青森県・深浦町にある陸上・淡水の「中間養殖場」で育つ幼魚の「いま」についてお話ししようと思います。

青森県・深浦町の中間養殖場全景。ここで幼魚が育ちます


青森県の南西部、深浦町。五能線から見える美しい海岸線も観光資源です

陸上・淡水の「中間」養殖場とは

サーモンは、孵化(孵化)してから幼魚の時期を淡水で過ごします。さきほどの写真にある陸上・淡水養殖場の中心あたり、一つ一つの長方形の区画・水槽が幼魚の住まいです。

陸上・淡水の中間養殖場の水槽。幼魚が泳いでいるのが見えますね

わたしたちは、サーモンの孵化から一定の大きさまでの育成を陸上養殖場で、以降水揚げまで、サイズを大きくするための育成を海面養殖場で行います。
海面養殖場へ引っ越すまでの「中間的な」育成設備として、陸上・淡水養殖場のことを「中間養殖場」と呼んでいます。

今回の記事は、中間養殖場に幼魚が引っ越してくる「受け入れ」という作業をご紹介するのですが、まずは最初の質問

「なぜ引っ越しが必要なのか?」

から紐解いていきます。

なぜ引っ越し?

シンプルな答えとしては、「魚体の成長に伴って、より広いスペースを割り当てるため」です。スペースを必要とする理由としては、大きく2つに分けられます。

・ストレスなく自由に動き回るための最低限必要なスペース(容積)
・酸素を身体に取り込むために必要な一匹あたりの水容積

今回、この「ストレスをかけない」という言葉がたくさん出てきます。養殖スタッフがどれだけこのために心を砕いているか、読んでいただけるとありがたいです!

サーモンにとってだけでなく、およそ生き物すべてにとって、よりストレスが少ない生活環境を準備することはとても大事なことです。

ストレスの有無は、食欲にも直結します。となると、サーモンを大きく育てたい養殖の目的において、健やかな成長=ストレスのない環境は必要不可欠なことですよね。

また、生存のための呼吸・酸素も大事。ちなみに一匹あたりでどのくらいのスペースが必要なの?という質問にお答えすると、わたしたちはサーモンの身体の大きさ(体積)に対して約40倍以上の容積(=水槽に対してサーモンの体積2.5%以下)の水槽を準備します。これ以上過密な状態になると、ストレスが増えるし、酸欠になってしまいます。

ぎゅうぎゅうに見えますが・・・

写真で見ると、水槽に対してぎゅうぎゅうにサーモンがいるように見えますが、これは池の鯉のエサやり同様、人間が近づくと餌が食べられると学習しているため、水面近くに寄ってきている状態です。実際は水底あたりはスッカスカです(笑)

引っ越しには3種類あるんです

さて、引っ越し作業の詳細に戻りましょう。
わたしたちが行っているサーモンの引っ越しには3つあります。

①   同じ中間養殖場内の水槽から水槽へ移動
②   別の中間養殖場の水槽からトラックで、別の中間養殖場の水槽へ移動
③   中間養殖場の水槽から海面(海水)養殖場いけすへの移動と
馴致(じゅんち:淡水で過ごしたサーモンを海水環境に馴らすプロセス)

①についてはイメージしやすいと思います。身体が大きくなり手狭になった水槽のサーモンたちのうち、例えば半分を、となりの空き水槽に移動する、という作業です。

今回ご紹介するのは②、中間養殖場をまたいでの引っ越し・受け入れです。そこで頭をもたげてくる疑問、

「なんでわざわざ別の養殖場から引っ越しが必要なの?」

にお答えします。

わたしたちは、昨シーズン(2023年)に1,606トンのサーモンを養殖・出荷する、国内最大級のサーモン養殖事業を行っています。
サーモンの成長サイズに合わせて、陸上養殖場・海面養殖場に、快適に暮らせる水槽・いけすがあり、容積に合わせて適正な数のサーモンが暮らしています。
各養殖場は、地図をご覧いただければわかる通り、青森県内に点在しています。

おもに津軽半島と南西部に集中しています

陸上養殖場の水槽も、成長過程に合わせて様々なサイズがありますが、各養殖場にちょうどいいサイズの水槽があるとは限りません。

できるだけ幼魚にストレスをかけないためには、本当は養殖場間で移動させないほうがいいのですが、なにしろわたしたちの養殖規模は年々増えています。2019年から2023年の4年間で養殖量は3倍になりました。

オカムラ食品工業グループの養殖事業会社、日本サーモンファームの青森サーモン®養殖量推移。
詳細は下記統合報告書をご覧ください。

成長過程にぴったりのの水槽を準備するよう努めていますが、各養殖場内で水槽が幼魚の数に合わせてシンデレラフィット、とはいかないものです。手間暇もストレスもかかるので最小限にとどめてはいますが、こういった理由で②の引っ越しが必要になります。

幼魚はこうやって運んでいます

トラックに積まれた茶色の水槽がずらり

さて、どうやって運ぶかというと、トラックに特注の(弊社養殖事業にお決まりのワード「特注」出ました)茶色の水槽を載せて運びます。狭い水槽にぎゅうぎゅうに押し込まれたサーモン、そのままでは酸欠になってしまいます。そこで、トラックに液化酸素を積んで、水槽に常に酸素を供給しながらの移動です。

フェスの会場とかラッシュアワーの満員電車とか、人間にとっても空間が狭くて動きが取れない場所に長くいるのはストレスですよね。サーモンにとっても同じで、狭い水槽はあまり環境が良いとは言えません。押し込まれている時間はなるべく短くしたいところです。

ところが、トラックの移動スピードにも気を遣っています。もちろんアクセル・ブレーキの頻度が少なく、ゆっくり運ぶほうがストレスは少ないです。早く移動して狭い水槽から開放してあげたいけれど、あまりアグレッシブな運転で、中にいるサーモンをびっくりさせたくない。ジレンマですねー。

さらに、音にも気を遣います。車のエンジン音・クラクションなど、真っ暗な水槽の中で目隠し状態のなか大きな音がするとサーモンたちには当然ストレスです。自身に置き換えてみれば、パニック寸前ですよね。

静かに、ゆっくり、そろりそろりと幼魚たちは運ばれるのです。

まだまだ続くストレスへの気遣い

雲一つない朝、トラックが到着

前置きが長くなりましたが・・・ようやくサーモンが県内のほか養殖場から青森県深浦町の養殖場までやって来ました。 
今回、夜通し移動したトラックが到着したのは朝7時。早朝からスタッフが出社し、前日夜からトラックで移動してきた幼魚をいけすに放つ作業がはじまります。
 
幼魚を運んできたトラックは、港に接岸するタンカーよろしく、養殖場のいけすの隣まで移動してきます。
 
トラックの幌が開くと、整然と並ぶ水槽。この中に、幼魚が満載されています。

引越し前の入念なチェックのひとつ、「水温チェック」

じゃあすぐにでも移動開始、とはいきません。移す前には確認作業もあります。そのうちのひとつがこれ、水温チェックです。

左側のスタッフが持っている赤い丸いものは水温計です。トラックの水槽と養殖場の水槽、両方の水温を計り、大きな水温差がないことをチェックするんです。温度差が大きいと、幼魚がびっくりして、ストレスを受けます。これについては例えるまでもないですね。だからこそ、確認が大事。

いかにスタッフがストレスを掛けないように心を砕いているか、よくよくおわかりいただけたのではないでしょうか。

水槽に開放します!

全てのチェックが終わったら、ようやく養殖場の水槽へサーモン受け入れです。

トラックの水槽の底近くには、折りたたみ式の管(深緑のナイロン袋のようなもの)がついています。

水槽の底から出てきた、折りたたみ式のホースを取り出す

これを、水槽につなぐための黒い掃除機のホースのようなチューブに接続して、水槽の水と一緒に一気に放流します。ドバーッといきます。

ドバーッっと

さながらあれです、ウォータースライダープールのごとし。いやいや、サーモンにとっては突然のウォータースライダーなんて何が何やら、ストレスのはずですが・・・水槽間のこの移動ばかりはいたしかたなし・・・ 

わけもわからずウォータースライダーで水槽へ飛び込む幼魚たち

これで引っ越しは終了です。広々としたスペースに移動できて伸び伸びできているのか、ほかの水槽よりも水面から飛び跳ねる幼魚が多いのです(中の人の独断観測)。いや、ホントですよ。

開放感

先程の地図でご覧いただいた通り、ここ青森県深浦町の養殖場に取水している川の源流は世界遺産、白神山地。自然の恵みをいただいて、サーモンはすくすくと育っていきます。 

世界遺産白神山地にある十二湖の景色から。同じ山系から流れてくる水でサーモンは育ちます

ストレスをできるだけ少なくし、サーモンを安全・安心に育てたい。スタッフはこんな想いを胸に、今日も日々の育成作業や整理整頓・掃除にいそしみます。

自然に囲まれた青森サーモン®の育成環境。ここで一緒にサーモンを育てるスタッフを募集しています!

追い追いお伝えしていくつもりですが、養殖スタッフには地元生え抜きのメンバーもいますが、Uターン・Iターンのスタッフも結構います。それぞれのスタッフの前職も多彩です。どうぞお気軽にコンタクトいただければと思います。お待ちしております!


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