見出し画像

青森サーモン®養殖ダイアリー⑥ 「サーモン水揚げが終わった養殖スタッフは何をしているのか」問題 その1

オカムラ食品工業が手掛ける養殖・調達・加工・販売の4つの垂直統合事業のうち、サーモン養殖事業にスポットをあてて、四季折々のイベントを追いかける「青森サーモン® 養殖ダイアリー」。
 
この公式noteを始めるにあたり、最初にお伝えしたかったのは「水揚げ」でした。初記事だったので、公開ボタンをポチるときには緊張したなあ(遠い目)。ちなみに水揚げの記事は、24年8月現在で一番読まれている公式note記事です。※このあと、記事のリンクを貼ります。

サーモンの大規模養殖は、世界的にはここ40年ほど、日本国内では10年も経っていない、若い産業です。まずは、多くの人にとって未知の産業のことを読める記事、WEB上の場所を作りたいと思って公式アカウントを開設しました。

いけすから水揚げしたサーモン。飛び跳ねてます

その水揚げは、今シーズンについては7月上旬で終了しました。
あれから1ヶ月。さて、青森の海で、養殖メンバーは今何をしているのか?実は社内でもあまり知られていないこの問いについて、今回はレポートしたいと思います。


なぜ今シーズンの水揚げが7月で「終了」となったのか

前提として、疑問はまずここにあるかと思います。以前の記事でも紹介しているので、ここでは簡潔にご説明します。
※一応、リンクを貼っておきます。

私達が養殖を行っているサケ類の故郷は、基本的に北半球の高緯度海域です。具体的には、太平洋側ではベーリング海峡を中心とする海域など、大西洋側ではカナダ・グリーンランド・北欧海域などとなります。つまり、海水温が比較的低いエリアを好む魚です。

わたしたちが海面養殖場を展開する青森県では、夏にはサケ類にとって「快適な海水温」よりも高くなり、食欲がなくなる→熱中症状態→水温に耐えられず死んでしまう海水温になります。このため、「海水温が20℃を下回る時期」に水揚げを完了させる必要があります。

今シーズン(2024年4月から7月上旬)、わたしたちは2700トン弱の水揚げを行いました。養殖メンバーは、シーズン前にこの量を想定した水揚げ・出荷計画を作ります。4月に水揚げが開始されてからは、気象庁が発表している過去・現在の海水温データと、日々計測する養殖場の実測・蓄積データとを毎日首っ引きで照らし合わせて、海水温が上がる前に水揚げが終わるように作業を進めます。

自然が相手ですから、それでも過去のデータはあくまでも参考です。明日を完全に予言することはできません。悪天候の日や設備・機械トラブルがあっても計画が狂わないように想定を重ね、今シーズンも計画通りに水揚げは完了しました。これ、結構すごいことなんです。めちゃくちゃ周到に準備します。オトナですから。
いまの日本では、毎日なんらかのニュースで触れるほどの関心事ですが、「温暖化」という大きな流れに対して、養殖スタッフは肌感をもって、全員で束になって「気候変動という大きな変化に対応」しています。

何をしているのか 分類してみた

前置きが長くなりましたが本題に入ります。
水揚げ後の養殖メンバーの仕事は、大きく分けると
①今シーズンで使用した設備のメンテナンス
②来シーズンに向けた設備の準備
③今シーズンの水揚げデータの集計や現状調査
④海にいた成魚は水揚げ完了だが、淡水・中間養殖所の幼魚のお世話
⑤休んでいる
の5つになります。
 
1回の記事では、すべてを書ききれないので、順番に説明していきます。
が、オーダー変更を希望します。
お盆の時期の記事アップでもあるし、ご時世でもあるので、まずは「休んでいる」ことを書こうかと思います。

①休んでいる
②今シーズンで使用した設備のメンテナンス
③来シーズンに向けた設備の準備
④今シーズンの水揚げデータの集計や現状調査
⑤海にいた成魚は水揚げ完了だが、淡水・中間養殖所の幼魚のお世話
この順番で説明していきます。

①休んでいる いきものに合わせた繁忙期

もうちょっと硬めに書き直すと、「健全な労働のためにも法的にも必要な、休暇を取得」しています。
養殖メンバーにとって、繁忙期の大きなヤマのひとつが、この水揚げシーズンです。作業開始時間は朝の3:30。最大出荷量の日ともなれば、水揚げ作業だけでも6時間程度かかる日もあります。

もちろん、その日の水揚げ作業だけすれば終わり、ということではありません。ざっと挙げてみるだけでも
 
・翌日以降水揚げを予定するサーモンを、沖合にあるいけすから作業場所の近くまで移動しておく(悪天候で作業できない日もあるので、先を読みつつ多めに移動)

水揚げする港に横付けしたいけす。沖合1kmにあるいけすから、ここに移します

・水揚げ設備や船の掃除・給油・メンテナンス
・まだ水揚げしないタイミングのサーモンへの給餌

自動給餌船(バージ船)にエサと燃料を搬入します。エサはトン単位/日でなくなります

・出荷尾数・出荷できなかった(例:死んでしまった)尾数のカウント
・加工工場や営業メンバーとの情報共有(出荷計画と現状の確認・調整)
・水揚げ風景を視察に来られる取引先や自治体・監査機関など来客対応

日々これだけの作業があるのです。多忙を極めますねー。

業界・業務内容にもよりますが、主に一次産業にカテゴライズされる、いきものにかかわる仕事では、成長に合わせて繁忙期が大きく偏るのは全般的な傾向なのではないでしょうか。
 
翻って、わたしたちの養殖メンバーも、②③④が完了しておくべき期限がある仕事とはいえ、休暇を取る必要があります。
来シーズンの水揚げ計画は高く、実現のためにやることはたくさんあります。とはいえ、しっかり休んでから業務を進めるほうが、かえって効率よく進められることもあります。 

生食用サーモンは世界的に大人気で、生産量が追いつかない状況です

あくまで企業公式noteではありますが、今回はサーモン養殖業界・水産業界を俯瞰して見てみようと思います。
あくまで推測ですが、いま国内サーモン養殖関係者は、いずれもわたしたちと同じような忙しさとなっていると思われます。なぜなら、いまサーモンは日本だけでなく世界で需要の高い水産物だからです。特にアジアの需要が高まっています。


みなさんが身近に口にすることができる、スーパーの店頭やお寿司屋さんの生食用サーモンは、日本国内だけでなく世界でいま大人気です。
みなさんご存知の「カリフォルニアロール」も、いまやすっかり定着しましたね(注)。サーモンの寿司は日本を飛び出して、というよりは海外を発祥としながらも、世界で食べられている食材です。

注:(スモーク)サーモンを巻いたお寿司は「フィラデルフィアロール」なのだそう。知らんかった。トリビアー

イラストとトリビアは「いらすとや」より

もちろん、日本の回転寿司店でも「アボカドサーモン」をはじめサーモン寿司が人気な現状が示すとおり、国内の需要も旺盛です。サーモン養殖は、わたしたちだけでなく全般的に増産傾向となっているのです。

サーモン養殖漁業は、水産業の中でも成長産業です

その一方で、農林水産省の調査によると、日本の漁業就労者数は2013年から2022年の9年間で18.1万人から12.3万人へ、3分の1弱の就労人口が減っています。

農林水産省 漁業労働力に関する統計 より抜粋

漁業のIT化など、効率化による就労者数減少もあるかもしれませんが、近年のさまざまな漁獲量の減少のニュースを見ていても、水産業自体の規模縮小を免れてはいないように思います。
 
しかし、サーモン養殖は違います。
 
わたしたちの養殖サーモン水揚げ量は、今シーズンまでの実績でも来年度の水揚げ計画も右肩上がりです。計画的に出荷が可能な養殖で安定供給を行い、みなさんにリーズナブルな(価格に対して価値のある)サーモンをもっとお届けできる予定です。

オカムラ食品工業 サーモン国内養殖量推移 

オカムラ食品工業 2024年6月期 決算補足説明資料(2024年8月9日発表)
140120240808567727.pdf (xj-storage.jp)

だからこそ、よい労働環境を

だからこそ、一緒に働くメンバーにとって、右肩上がりの産業でありつつ、休暇もちゃんと取れる職場環境になっていることが、とても大事です。ちゃんと休んで、復帰したらまた一緒に、元気に来シーズンの準備を進めていきたいです。
 
②   以降を全くご紹介できませんでしたが、今回はここまで。次回は、道具のメンテナンスについてご紹介したいと思います。

サーモン養殖産業で水産業を一緒に元気に

最後に、成長産業で一緒に働きたい方、わたしたちの採用サイトへぜひお立ち寄りください。お待ちしております!

この記事が参加している募集