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青森サーモン®養殖ダイアリー⑨ 祈るということ。

オカムラ食品工業が手掛ける養殖・調達・加工・販売の4つの垂直統合事業のうち、サーモン養殖事業にスポットをあてて、四季折々のイベントを追いかける「青森サーモン® 養殖ダイアリー」。

歳時記的に養殖場の「いま」を切り取るこのシリーズも、夏が終わり9月になりました。養殖場のある青森県今別町・深浦町では、日中こそ30℃に迫る勢い(30℃にならない日のほうが多い)ですが、朝は20℃を下回る日も。関東以西のみなさんにとっては羨望の眼差しを浴びること間違いなしの涼しさです。
言っときますが、早く涼しくなる分、このあと底抜けに気温は下がります。要は、冬が寒いんですよ・・・

日差しはまだまだ強いですが、日陰に入ると涼しい風

そんな中、今回はサーモン・漁業にまつわる「祈り」についてお伝えしたいと思います。


「鮭供養」をします

水揚げハイシーズンが終わり、暑さも少しだけ和らいだこの時期、養殖場では「鮭供養」を行います。

毎度お伝えしていることながら、日本での「大規模サーモン養殖」は10年と経っていない若い産業です。鮭供養?という耳慣れないワードが出てきても、読者のみなさんはもう慣れっこになっていただけましたでしょうか?ただ、「◯◯供養」がいくつあってもおかしくない、という感覚は、日本に生まれ育っていれば、おありではないでしょうか。

みなさんご存知の通り、ここは八百万(やおよろず)の神のおわします日本です。お裁縫を常とする方々には「針供養」があります。使い古した針を柔らかい豆腐やこんにゃくに刺して、その労をねぎらいます。
また、キッチンには「火防(ひぶせ)の神」のお札を貼り、「トイレの神様」にまつわる歌がヒットし、断片的にならその歌のサビあたりを、みなさん口ずさむことができるのです。ザッツジャパンクオリティ。

海外、さらに言えばキリスト教やイスラム教などの一神教の方々から見たら、謎文化としか思えない風習かも知れません。が、あらゆるモノや場所に神が宿るという思想は、それぞれを大事に思う気持ちのなせる業。決して見過ごすべき習慣ではないと思います。

話をもどして、鮭供養です。
わたしたちの今別町・深浦町の淡水・中間養殖場の敷地内には、「鮭供養塔」が建立されています。わたしたちの養殖場では、年間で膨大な尾数のサーモンを育て、水揚げ・出荷を行っています。また、養殖過程で命を落とすサーモンもいます。年に一度の供養ではありますが、生き物の命をいただくことに思いを馳せる習慣は、わたしたちにとって、とても大事な時間です。

当日はお花が供され、お神酒(みき)を奉納し、お経があげられ、養殖メンバー・漁協漁師のみなさん・養殖場に関わるあらゆる方がこの日集まり、全員で線香を手向けます。携わる職種や、町の住民であるかどうか、ましてや人種など全く関係ありません。当日参集可能な全員で、供養は行われます。

聞き慣れない供養名ですが、ほかの供養と思いは一緒です。普段は
「種苗」や「水揚げ」という言葉で意識の裏に回っている、「命をいただく」ということに改めて向き合い、感謝を伝えるための象徴を建立し、手を合わせてサーモンへの供養を行います。

多聞天さんに豊漁を祈願する

同じ日に、今別町では多聞天(毘沙門天)さんの豊漁祈願も行われました。この祈願は、わたしたちが海面養殖場を設置する前から、今別漁協のみなさんが連綿と続けてきた祈願です。大漁旗を掲げた漁船が列をなし一斉に海に出て、今別湾を3周しながら海の神様に豊漁の祈願をするというものです。コロナ禍当時は残念ながら行われず、その後も予定していた日が天候不順で中止となり、今回は5年ぶりの開催となったそうです。

祈願の先頭の船に乗っていただくのは今別町・本覚寺の和尚さま。太鼓とともに船に乗り、お経をあげてくださります。

一緒に載せるのは、一つ一つに「南無阿弥陀仏」を書き込んだ祈願の石。海に投げ入れます。お神酒も載せて、いざ出発です。

1隻あたり50個くらいの石を載せてました

悪天候でこれまで開催できなかったのが嘘のような9月上旬の晴れの日、出港です。本日の出港は8隻。
地元の漁師さんに聞くと、「昔は十数隻で船団を組んで行ったもんだが、ずいぶん減ってしまった」とのこと。

ここは津軽海峡。対岸の北海道までくっきりと見える晴天です

それぞれの船が大漁旗を掲げて、今別湾内を周回します。

多聞天さまと海の神様に豊漁祈願としてお神酒を捧げ、

お経を書いた石を、こちらも海に捧げます。連綿と続けてきた今別の漁師みなさんの祈り。海底にはいまも積年の祈願石とともに豊漁への思いが沈んでいます。

写真左奥に見える「輪っか」のいけす、わたしたちの海面養殖場の隣を三周回って、豊漁祈願は終了です。

この日は朝から最高の天気。写真左奥にある龍飛崎の右奥に見える北海道も、写真には入り切りませんでしたが青森県のもう一つの半島、下北半島も終日よく見渡せる穏やかな日でした。

来シーズンも、怪我なく事故なく災害なく、サーモン養殖を行えるといいなあ、と思う1日となりました。


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