「サーモン養殖」のながめ方①Google Mapでながめる
「中の人」ことわたくしが広報という仕事に就いてこの半年ほど、いろいろな形でお会いする方に、サーモン養殖のあれこれを話してきましたが、それに対する反応は、ほとんどと言っていいほど「へー、そうなんですね」であり、「知ってるしってる!」という方はほぼいらっしゃいませんでした。
わたしたちの祖業の地である青森県内ですら、「あー、聞いたことはあります」という、36.9℃くらいのギリ平熱感。
ただ、もっとアツく語ろうぜ!という、中の人との温度差がありすぎると「一方的に喋ってる人」になってしまいます。博物館でボタンを押すとひたすら説明してくれる音声ガイダンス、あれです。これでは相手はドン引きまっしぐら。会話のうえで、この温度差の見極めはすごく大事にしてます。
どうすれば青森県民が、いや日本国民が「自分ごと」としてサーモン養殖を捉えられるようになるのか、日々伝え方を考え続けています。大上段に構えても、耳を傾けてくださるわけではないので、入口としての課題は「いかにサーモン養殖に興味を持ってもらうか」。
これまで連載を続けている「青森サーモン®養殖ダイアリー」は、養殖の現場を歳時記的に追いかけて興味を持っていただく方法論ですが、ちょっと違う視点で別のクラスタの方にも面白そう、と思ってもらうことが必要そうです。
このシリーズでは、ごくざっくりとでもいいので、サーモン養殖ってどういうこと?という興味喚起として、養殖現場以外の視点からスポットライトをあててみます。第1回は視点をひろーく捉え、「地図から見るサーモン養殖」です。地理・地図クラスタの方から興味を持ってもらうのが狙いです。
サーモン養殖は若く、成長期
先日、高校生20名ほどに向けて会社と事業を紹介する機会をいただきました。説明資料を小脇に抱え(という表現は、PC・パワポで資料を持ち込むようになった今となっては平成しぐさ)、小1時間ほど話してきました。
その際にも、ほとんどの生徒さんの反応は「県内でサーモンを養殖しているなんて、はじめて聞きました」。
なんのことはない、生徒さんの親の世代ですら「わが県の産業」として、サーモン養殖はまだまだ認知されていないのが原因です。このため、食卓にサーモンが乗せられても、お寿司屋さんでサーモンを見かけても、お茶の間の話題は熱を帯びません。
何度でも、くどいほどお伝えします。わたしたちがいま推進している「大規模生食用サーモン養殖」は、世界的にもここ40年ほどで発展した産業です。わたしたちを含めて、日本で技術を導入・推進を始めてから10年と経っていない、若い産業です。
直近30年ほどだけでも、世界の養殖サーモン生産量は7倍に拡大しています。スーパーなど魚介売り場で、特に刺し身・寿司売り場でサーモンを見ない日はないほどの品揃えを実現できるのは、養殖サーモンの拡大が背景にあります。
世界的に養殖している どこにあるの?
ところで、中の人は「ド」がつくほどの文系です。学生の頃は、ヒマさえあれば地理の副教材、日本地図帳・世界地図帳を開き、行ったことのない国・地域を想像しながら、いくらでも時間を費やすことができたものです。
いま同じことをしたければ、みなさんならどんな地図を手にしますか?そう、Google Mapです。
紙の資料集のいいところは、地理・産業・資源・気候・民族など様々な切り口で、それぞれのテーマ別にわかりやすく落とし込んで説明してくれるところです。それぞれのグラフや統計などと合わせて作り込まれており、読んでいて楽しいですね。
一方Google Mapの素晴らしいところは、世界のあらゆる場所の地図を開き、拡大し、ストリートビューでその土地の地形・気候だけでなく、村人の服装や民家のありよう、なんなら洗濯物まで見えてしまうという、ビフォーインターネットの時代では考えられないほどの超高解像度で世界を見ることができるようになったことではないでしょうか。
もとい。最近の紙の地図帳には、写真がほぼありません。それは、過去の写真など時間軸がズレない限りはGoogle Mapで画像が見られるようになったからではないかと思います。
そして、Google Mapで高解像度の地図が見られるようになった結果、なにが起こったのか。「サーモン養殖場が見える」ようになりました。
養殖場の「みつけ方」
どういうことかというと、上の写真にあるような
・円形のいけす
・いけすと繋がったバージ船(自動給餌船)
を上空から探すことができる、ということです。Google Mapで見てみると、
ちょっとわかりにくいですが、赤丸のところに養殖場があります。拡大すると、
このような「輪っか」とホースで繋がった、左端に見える四角のバージ船を見つけることができます。
バージ船について知りたければこちらへどうぞ。
もう少し分かりやすい地図で見ましょう。
上の写真は、青森県深浦町 北金ヶ沢港の写真です。海面養殖場がもう見えています。見つけられましたか?さらに拡大すると・・・
防波堤の南側の海上に、円形のいけすを見ることができます。これが、サーモン養殖のいけすです。
具体的には、このような円形のいけすの枠に、魚網を海中に吊り下げて、その中でサーモンを養殖します。
ここまで読んで、いけすの中のサーモンに興味の湧いた方は、ぜひ「サーモン養殖ダイアリー」をご覧ください。
世界のサーモン養殖産地を見てみよう
日本国内では同じようないけすを多く見つけることができませんが、外国でなら可能です。
なぜなら、魚介売り場で表示されているサーモンの産地を見ているとおわかりいただけるように、現在サーモン養殖の主要国はノルウェー・デンマーク・イギリスにまたがる北海と南米チリです。わたしたちの会社の養殖場ではないため詳細をお伝えすることはできませんが、主産地となる地域には、同様のいけすの「輪っか」を見つけることができます。
探してみる場合には、以下の「サーモン養殖の好適地」となる条件を参考にしてみてください。
・20度より低い海水温(サケ類の原産地は北半球の高緯度帯)
・適度な海流(酸素の供給に大事な要素)
・凍らない海(流氷などの衝突でいけすが壊れるためNG)
これを満たす地理的条件は、「フィヨルドと海峡」です。
例えば、この両方の条件「フィヨルドと海峡」を満たす場所として、デンマークの自治領となっているフェロー諸島があります。現在、世界屈指の養殖サーモン産地です。興味があれば下記リンクからご覧ください。
Google mapでフェロー諸島の「フィヨルド・海峡」を探すと、日本国内以上に、いけすが簡単に、大量に見つかったはずです。それもそのはず、世界の養殖サーモン生産量は約360万トン。わたしたちが水揚げを行った今シーズン、2024年は約2700トン。
世界のサーモン養殖好適地には、日本とは比べ物にならない規模のいけすが設置されているのです。
わたしたちがサーモン養殖をおこなっている津軽海峡もまた、世界に引けを取らない好適地です。わたしたちはここで、地域のみなさんと一緒に新しい産業に取り組んでいます。
おわりに
バーチャルでサーモンのいけすを探す旅、楽しかったですか?中の人にとってはこれ、猛烈に楽しくて、最近の趣味になってるくらいです。
ただ、パソコンの画面でだけ満足するのではなく、調べたあとには、機会を見つけて「自分の目で見て確かめる」をお願いしたいところです。北欧や南米に行く必要はありません。ぜひ青森県今別町・深浦町にお越しください。遠くからではありますが、わたしたちのメンバーがご案内するまでもなく、海上に浮かぶ輪っか、いけすをご覧いただけます。
まずはお近くの青森県にお住まいのみなさん、青森にいらっしゃる機会のある方、百聞は一見にしかずです。ぜひ探して、楽しんで。その後の訪問をお待ちしております!
※日本サーモンファーム株式会社 ホームページ(オカムラ食品工業の養殖事業グループ会社)